これまでいわゆる「重厚長大」企業にはお世話になった。しかし、現在では「軽薄短小」企業が株価、収益も高く、世の中の潮流に乗っている。米国では、製造業から金融、情報、通信等に業態転換が行われ、これに伴い、伝統的な機械工学、化学、電気工学等を専攻する学生が減少している。高学歴人口において、エンジニアリングを専攻する学生の比率は、2020年頃で米国7.2%、日本18.5%、ドイツ24.2%(エマニュエル・トッド「西洋の敗北」59-60頁、文藝春秋、2024年)。
日本の重厚長大企業も、低収益事業の売却、新規事業への参入等を図っているが、コア事業(技術)を今後とも維持発展させて行くべきである。このようなコア技術を活かして新たなイノベーションを起こすことができないか、という課題について、ずっと考えてきた。たまたま新聞を読んでいたら、面白い記事があったので紹介する。山形県山辺町にある「米富繊維」は、ニットを生産していたが、韓国、台湾、中国の安価な輸入品にシェアを奪われ、「潰れる一歩手前」まで行ったそうである。復活のカギとなったのは、工場に残っていた「ローゲージ」の編み機である。ゲージとは1インチの間にある針の密度で、この数字が小さいと編み目がざっくりしたローゲージニット、大きいと目が詰まったハイゲージニット。欧米の有名ブランドはハイゲージの編み機で編むのが一般的であった。会社は規模縮小のためハイゲージの編み機を手放した。そこで、素材や太さが異なる糸を編んで全く新しいニットを生み出す「交編」という技術を、ローゲージの編み機に適用し、さらに会社には職人が生み出したオリジナルの編み地2万枚以上保存されていたところ、これからインスピレーションを得て、色や素材の組み合わせが楽しい自社ブランドを立ち上げた(日経、2025年4月6日18面)。これはインダストリアル・ルネッサンスの一例である、そして、最近、同じような問題意識を持った米国の経営学者にたどり着いた。現在スケッチ中であり、他日を期す。
2025年4月23日記(2025年6月20日転載)