この事件について2024年11月に投稿しているところ、第1審(東京地裁)と第2審(知財高裁)で判断が分かれている。これに対し最高裁は特許法上の「属性主義」の原則を柔軟にとらえる判断を令和7年(2025)3月3日に出した(令和5年(受)第14号、同15号、令和5年(受)第2028号)。
最高裁は、「我が国の特許権の効力は、我が国の領域内においてのみ認められるが(中略)、電気通信回線を通じた国境を越える情報の流通等が極めて容易となった現代において、プログラム等が、電気通信回線を通じて我が国の領域外から送信されることにより、我が国の領域内に提供されている場合に、我が国の領域外からの送信であることの一事をもって、常に我が国の特許権の効力が及ばず、上記の提供が「電気通信回線を通じた提供」(特許法2条3項1号)に当たらないとすれば、特許権者に業として特許発明の実施をする権利を専有させるなどし、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に沿わない。そうすると、そのような場合であっても、問題となる行為を全体としてみて、実質的に我が国の領域内における「電気通信回線を通じた提供」に当たると評価されるときは、当該行為に我が国の特許権の効力が及ぶと解することを妨げる理由はないというべきである。」との判断をした。
[所感]
ビジネスやサービスの国際化にあわせ、特許法上の属地主義の原則を柔軟に解釈するという判断が確定した。日本の特許権は、国内だけではなく、外国で起きる事象についてもっと注視して所要の対応をとるべきであろう。
2025年1月25日記(2025年6月20日転載)