人は何か問題にぶつかった時,意見を求めたい友人は何人かいるものである。弁理士の畏友・長谷川曉司君はその一人であった。彼は大手化学会社の理事・知的財産部長を務めた後,「長谷川知財戦略コンサルティング」を設立し,知財コンサルタントとして活躍していた。彼は2011年に逝去し,著書「御社の特許戦略がダメな理由」(1)2010年3月25日第1刷発行,中経出版
国立国会図書館サーチ「御社の特許戦略がダメな理由 : 9割の日本企業が、特許を取っても利益に結びつけていない 」詳細情報を遺した。「漫然とした特許出願による損失」,「攻めの特許戦略が大利益を生む」,「経営戦略という視点で特許を見る」,「戦略は事業,研究,知的財産の「三部門一体」で立てるべき」等といった点が記載されている。具体的な実例とこれらに裏付けられた理論にリアルティがあり,理論と実務が見事に融合した「名著」である。知的財産関係の仕事に携わっている者,特に企業経営者の必読の書ある。
ある日の飲み会における知財の在り方の談論。
彼「『戦わずして勝つ』ことが,一番の戦略(笑)」
私「弁理士は世の中が乱れて何ぼの商売,私に死ねということだ(笑)」
彼「ム・・・いや先生には別の面で活躍を(笑)」
ここで,「戦わずして勝つ」とは,孫子の謀攻篇に「不戰而屈人之兵,善之善者也」(戦わずして敵を屈服させることこそ最善である。諸橋轍次訳)とある。
知財のグローバル化の中,日本の知財の停滞,中国の圧倒的な知財パワー,人工知能(AI)の進展の現況を,彼はどのようにみているのか聞いてみたかった。私は尊敬する友人がいなくなったことを,大いに悲しまざるを得ないのである。
(花田吉秋2020.1.17)
脚注
↑1 | 2010年3月25日第1刷発行,中経出版 国立国会図書館サーチ「御社の特許戦略がダメな理由 : 9割の日本企業が、特許を取っても利益に結びつけていない 」詳細情報 |
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