近時、特許法に大きな改正があった。それは、経済安全保障法(令和4年5月10日公布)の第5章の、特許出願非公開制度である(令和6年5月1日施行)。
従前の出願公開制度(改正45年法、昭和46年1月1日施行)は、出願後1年半後に全出願を公開するものである。当時、出願数が急増し、大幅な審査の遅延が生じ、このため、審査請求制度を設け出願人に再度の見直しを期待することにより、審査案件を減少させる目的であった。
今回の改正法の趣旨は、公にすることにより国家及び国民の安全を損なう事態を生じるおそれが大きい発明が記載されている発明につき、出願公開等の手続きを留保するととに、その間、必要な情報保全措置を講ずることで、特許手続を通じた機微な技術の公開や情報流出を防止するものである。どのような発明が出願非公開の対象になるかは、特定技術分野が選定されており、国家の安全保障に大きな影響を与え得る先端技術、国民生活等に大きな被害を生じさせ得る技術が含まれている。
日本も、戦前、軍事上の観点から秘密特許制度があったが、戦後廃止された。近時の国際情勢の変化、欧米、中国等も何らかの出願非公開制度を有している等から日本も成立させることとなった。
2024年10月16日記(2025年6月20日転載)